好物日記

本を読んだり美術館に行ったりする人の日記

岸政彦・柴崎友香『大阪』を読みました

大阪作者:岸 政彦,柴崎 友香発売日: 2021/01/27メディア: 単行本 私が生まれたのは大阪市内のとある病院ですが、物心つくまえに引っ越してしまったので、大阪の記憶はない。私にとって大阪というのは、母親が生まれ育った街であり、両親が出会った街であり、…

チャン・リュジン『仕事の喜びと哀しみ』(牧野美加 訳)を読みました

仕事の喜びと哀しみ (K-BOOK PASS 1)作者:リュジン, チャン発売日: 2020/12/23メディア: 単行本数年前から韓国の現代小説が書店で目立つようになっていたけれど、なんとなく機会を逃し続けてまだ一冊も読んでいなかった。現代韓国小説市場はフェミニズムとす…

四方田犬彦『愚行の賦』を読みました

愚行の賦作者:四方田 犬彦発売日: 2020/08/27メディア: 単行本書店で見かけて我慢できずに買いました。四方田犬彦の新刊! この分厚さがいい! 四方田犬彦は文章が上手いというのは勿論その通りなんだけど、さらに、興味の引き出しをたくさん持っているらし…

山尾悠子『山の人魚と虚ろの王』を読みました

山の人魚と虚ろの王作者:山尾悠子発売日: 2021/02/27メディア: 単行本『飛ぶ孔雀』で初めて山尾悠子を知って恋に落ちる勢いで好きになり、今回の新刊も喜び勇んで買いました。函入りで美しい装丁はさすが国書刊行会、気合入ってる! 寝る前に少しずつ読んで…

パティ・スミス『Mトレイン』(管啓次郎 訳)を読みました

Мトレイン作者:パティ・スミス発売日: 2020/11/21メディア: 単行本パティ・スミスの名前は一応知っていましたが、この本は訳者の管啓次郎に惹かれて買いましたが、結果的にパティ・スミスのことも好きになった。 河出書房新社から出ているのですが、装丁がい…

松本清張『昭和史発掘 13』を読みました

ノンフィクションシリーズ『昭和史発掘』、全13巻の最終巻を読み終わりました! 父親のお下がりの古い版で、主にお風呂の中でちょっとずつ読み進めていました。ブログ記事を確認したら、1巻の感想は2020年3月15日にアップしているので、ちょうど一年お付き合…

映画『DAU. ナターシャ』を観てきました

www.transformer.co.jp2021年に初めて映画館で観た映画となりました。監督はロシアのイリヤ・フルジャノフスキー、舞台は1952年のソ連。 ソ連時代の某研究施設での話なのですが、出演する人々が「ソ連時代を完全に再現したセットで2年間生活」するプロジェク…

ジョゼ・サラマーゴ『白の闇』(雨沢泰 訳)を読みました

白の闇 新装版作者:ジョゼ・サラマーゴ発売日: 2008/05/30メディア: 単行本(ソフトカバー)「はじめての海外文学スペシャル2020」で紹介されていて気になってました。ようやく読みましたが、読み始めてから読み終わるまで結構時間がかかって、しんどかった…

「2022年の『ユリシーズ』」の読書会(第十回:第十挿話)に参加しました

www.stephens-workshop.com2021年2月21日にZoomで開催された「2022年の『ユリシーズ』」の読書会、第十回に参加しました。2019年に始まったこの読書会は『ユリシーズ』刊行100周年である2022年まで、3年かけて『ユリシーズ』を読んでいこうという壮大な企画…

松本清張『昭和史発掘 12』を読みました

ノンフィクションシリーズ『昭和史発掘』、12巻を読み終わりました。父親のお下がりの古い版でISBNがついていないので、リンクは無しです。12巻は、11巻で蹶起部隊が撤退した後の話になります。彼らがどのような処分を受けるのか、というところ。内容は以下…

橋本輝幸 編『2010年代海外SF傑作選』を読みました

2010年代海外SF傑作選 (ハヤカワ文庫SF)作者:ピーター トライアス,郝 景芳,アナリー ニューイッツ,ピーター ワッツ,サム・J ミラー,チャールズ ユウ,ケン リュウ,陳 楸帆,チャイナ ミエヴィル,カリン ティドベック,テッド チャン発売日: 2020/12/17メディア:…

ヨシフ・ブロツキー『ヴェネツィア 水の迷宮の夢』(金関寿夫 訳)を読みました

ヴェネツィア 水の迷宮の夢作者:ヨシフ・ブロツキー発売日: 1996/01/17メディア: 単行本結構前にブックオフで買ったものです。ちょくちょく見かけるので、ベストセラーになったんでしょうか。帯に「ノーベル賞受賞作家の小説、本邦初紹介!」と銘打ってある…

フリオ・リャマサーレス『無声映画のシーン(木村榮一 訳)を読みました

無声映画のシーン作者:フリオ・リャマサーレス発売日: 2012/08/23メディア: 単行本ブックオフで見かけて、好きそうな雰囲気だったので買いました。 何が好きそうだと思ったかというと、この作品のコンセプトです。母親が大事に持っていた30枚の写真を見なが…

橋本輝幸 編『2000年代海外SF傑作選』を読みました

2000年代海外SF傑作選 (ハヤカワ文庫SF)作者:エレン クレイジャズ,ハンヌ ライアニエミ,ダリル グレゴリイ,劉 慈欣,コリイ ドクトロウ,チャールズ ストロス,N・K ジェミシン,グレッグ イーガン,アレステア レナルズ発売日: 2020/11/19メディア: 文庫2020年が…

ジョン・ウィリアムズ『ブッチャーズ・クロッシング』(布施由紀子 訳)を読みました

ブッチャーズ・クロッシング作者:ジョン・ウィリアムズ発売日: 2018/02/26メディア: 単行本人生初のジョン・ウィリアムズ作品、じっくりゆっくり読んでいましたが、ついに読了しました。ジョン・ウィリアムズといえば『ストーナー』なのは知っているのですが…

ポール・シャピロ『クリーンミート 培養肉が世界を変える』(鈴木素子 訳)を読みました

クリーンミート 培養肉が世界を変える作者:ポール・シャピロ発売日: 2020/01/09メディア: 単行本面白かったという話を聞いて図書館で借りて読んだのですが……めちゃくちゃ面白かったので後日改めて買います! 「クリーンミート」=培養肉という、名前は聞いた…

松本清張『昭和史発掘 11』を読みました

父親のお下がりの文春文庫の古い版で読んでいる『昭和史発掘』11巻を読み終わりました。ISBNがついていなくて、新版は収録内容が違うので、リンクは無しで。10巻でついに決行されてしまった二・二六事件、11巻では蹶起部隊の撤退の様子が描かれます。二・二…

ねじれ双角錐群『来たるべき因習』を読みました

https://nejiresoukakusuigun.tumblr.com/post/632304404947681280/%E6%9D%A5%E3%81%9F%E3%82%8B%E3%81%B9%E3%81%8D%E5%9B%A0%E7%BF%92-strange-festival-speculative-fictionnejiresoukakusuigun.tumblr.com2020年秋の文学フリマで手に入れた一冊を読み終え…

恭賀新年、そして2020年の振り返り

明けましておめでとうございます。 2020年は大変お世話になりました。2021年もどうぞよろしくお願いいたします。 ブログを続けていられるのも、読んでくださる皆様のおかげです! いいねやスター、twitterやFBでのコメントなど、いつも励まされています。 20…

管啓次郎『本は読めないものだから心配するな 新装版』を読みました

本は読めないものだから心配するな〈新装版〉作者:管 啓次郎発売日: 2011/05/31メディア: 単行本(ソフトカバー)2020年の終わりを締めくくる記事が、とても素敵な本の感想となることを嬉しく思います。詩人であり人類学者であり翻訳家であり、な管啓次郎の…

ラヴィ・ティドハー『金星は花に満ちて』を読みました

www.hal-con.net日本のSF界には、はるこんという行事があります。春に行われるコンベンションだから、はるこん。ゲスト・オブ・オナーとして海外作家を招いたり、ディーラーズルームで即売会をしたりというお祭り……なのですが、実は行ったことがありません。…

川野芽生『Lilith』を読みました

Lilith作者:川野芽生発売日: 2020/09/26メディア: 単行本正直なところ、読みました、というほど読めてはいないだろうと思う。 Lilith(リリス)は川野芽生のはじめての歌集で、Twitterで流れて来たためにその存在を知ることができました。 私は日頃から詩や…

アリス・テイラー『窓辺のキャンドル アイルランドのクリスマス節』(高橋歩 訳)を読みました

窓辺のキャンドル アイルランドのクリスマス節作者:アリス・テイラー発売日: 2018/12/07メディア: 単行本アイルランドの人気作家であるアリス・テイラー、初めて読みました。2019年の神保町まつりで手に入れたのですが、去年は読みそびれていて、今年ようや…

酉島伝法『るん(笑)』を読みました

るん(笑)作者:酉島 伝法発売日: 2020/11/26メディア: 単行本酉島伝法の新刊とあらば買わないわけがない。しかし言霊が強くてしんどかったので、休み休み読みました。 もともと酉島伝法の本はすらすら読めるものではないのだけれど、今回は特に、じりじりとに…

グローバルエリート『WORK マンモス大合成』を読みました

globalelite.black2020年は地球レベルでいろいろありましたが、私にとっては「初めて文フリに行った年」でもありました。文フリ=文学フリマ。ずっと気になってはいたのですが行ったことは無く、しかし今回売り子のお手伝いをする機会を得て遂にデビューしま…

『銀河英雄伝説列伝1 晴れあがる銀河』を読みました

銀河英雄伝説列伝1 (晴れあがる銀河) (創元SF文庫)作者:石持 浅海,太田 忠司,小川 一水,小前 亮,高島 雄哉,藤井 太洋発売日: 2020/10/30メディア: 文庫銀河英雄伝説(以下、銀英伝)の新刊が出ると知ったのはTwitter上でした。それは公式トリビュートであり…

「2022年の『ユリシーズ』」の読書会(第九回:第九挿話)に参加しました

www.stephens-workshop.com毎度お馴染みとなってきましたが、「2022年の『ユリシーズ』」の読書会、第九回に参加しました。2020年12月6日午後にzoomにて開催されたものです。2019年に始まったこの読書会は『ユリシーズ』刊行100周年である2022年まで、3年か…

松本清張『昭和史発掘 10』を読みました

父親のお下がりの文春文庫の古い版で読んでいる『昭和史発掘』10巻を読み終わりました。ISBNがついていなくて、新版は収録内容が違うので、リンクは貼っていません。さて10巻なのですが、とうとう二・二六事件決行の朝にたどり着きました。 内容は以下の通り…

原美術館「光―呼吸 時をすくう5人」に行ってきました

www.haramuseum.or.jpもともと2020年春の展示予定だったものが、コロナの影響で冬になった展覧会です。 原美術館は、元邸宅として使われていたモダニズム建築の建物が有名で、ずっと気になっていました。しかし普段あまり現代美術を観ることがないので、ずっ…

『シオンズ・フィクション イスラエルSF傑作選』を読みました

シオンズ・フィクション イスラエルSF傑作選 (竹書房文庫)発売日: 2020/09/30メディア: 文庫シェルドン・テイテルバウム&エマヌエル・ロテムの編集によるイスラエルSFアンソロジーの翻訳です。訳者は中村融、安野玲、市田泉、植草昌実、山岸真、山田順子。 …