好物日記

本を読んだり美術館に行ったりする人の日記

ねじれ双角錐群『故障かなと思ったら』を読みました

nsoukakusuigun.booth.pm2022年11月22日(日)に東京で行われた文学フリマにて入手した、文芸同人・ねじれ双角錐群によるSFアンソロジーです。 ねじれ双角錐群さんは以前の文学フリマで発売前から噂になっていた『来たるべき因習』を読んでから、毎回チェック…

『人文学のレッスン 文学・芸術・歴史』を読みました

www.suiseisha.net信頼の水声社から2022年2月に刊行されていた人文学の本です。武蔵大学の人文学部の先生方が多く執筆されていて、大学の講義をちょこっとだけ聴講するような気分で一日一項目ずつ読んでいました。「人文学」がカバーする範囲はめちゃくちゃ…

高村友也『存在消滅 死の恐怖をめぐる哲学エッセイ』を読みました

半年以上ぶりにブログを更新します。 これまでの人生でもっとも仕事が忙しい一年を送っており、読書量が減ったり外出頻度が減ったりしましたがそろそろ復帰したいところ。 書店の巡回は定期的に行っており、この本も書店でたまたま見かけて買いました。こう…

ダリアン・リーダー『HANDS―手の精神史』(松本卓也・牧瀬英幹 訳)を読みました

ハンズ 手の精神史作者:ダリアン リーダー左右社Amazon書店で見つけて買いました。「私たちは手のしもべである。」という、帯のアオリにやられたのです。 想像が膨らむ目次は以下の通り。1. 分裂する手 ―自律と自由のパラドックス 2. 自律する手 ―手と口の…

工作舎 編『最後に殘るのは本』を読みました

最後に残るのは本工作舎Amazon工作舎50周年記念出版、本にまつわるエッセイ集です。帯には「67人の書物随想録」「ようこそ、書物の迷宮へ」と書かれていて、その帯の紙質といいフォントといい、本体の装幀の美しさといい、もうニヤニヤが止まらず素通りなん…

ブルガーコフ『巨匠とマルガリータ』(水野忠夫 訳)を読みました

巨匠とマルガリータ(上) (岩波文庫)作者:ブルガーコフ岩波書店Amazon巨匠とマルガリータ(下) (岩波文庫)作者:ブルガーコフ岩波書店Amazon実は結構前に読み終わっていたんですが、ずっと記事を書きそびれていました。めちゃくちゃ面白くて夢中で読んだも…

西崎憲・編『移動図書館の子供たち』を読みました

kaze no tanbun 移動図書館の子供たち作者:我妻 俊樹,円城 塔,大前 粟生,勝山 海百合,木下 古栗,古谷田 奈月,斎藤 真理子,西崎 憲,乘金 顕斗,伴名 練,藤野 可織,星野 智幸,松永 美穂,水原 涼,宮内 悠介,柳原 孝敦柏書房Amazon<kaze no tanbun>シリーズ第二…

現代思想 2020年10月臨時増刊号『総特集 ブラック・ライヴズ・マター』を読みました

現代思想 2020年10月臨時増刊号 総特集◎ブラック・ライヴズ・マター作者:大和田俊之,磯部涼,檀廬影,有光道生,和泉真澄青土社Amazon2020年10月に臨時増刊号として店頭に並んだ現代思想の「ブラック・ライヴズ・マター」特集。装幀が格好いいなと思ったら、川…

ローレン・アイズリー『星投げびと コスタベルの浜辺から』(千葉茂樹 訳)を読みました

星投げびと―コスタベルの浜辺から作者:ローレン アイズリー発売日: 2001/11/01メディア: 単行本古本屋で工作舎の自然科学系エッセイを見かけたときは、できるだけ買うようにしている。外れがないからだ。 この本も、古本屋で見つけて買った一冊です。著者の…

ブッツァーティ『タタール人の砂漠』(脇功 訳)を読みました

タタール人の砂漠 (岩波文庫)作者:ブッツァーティ発売日: 2013/04/17メディア: 文庫ずっと本棚に飾っていたブッツァーティの『タタール人の砂漠』を遂に読みました。いろんなところで良い評判を聞いていた小説でした。これが噂の!内容をあまり知らずに読み…

J・シュペルヴィエル『ノアの方舟』(堀口大學 訳)を読みました

シュペルヴィエル『ノアの方舟』堀口大學訳、青銅社、1977年古本屋でシュペルヴィエルの本を見つけたので、買って読みました。普段はAmazonのリンクを記事冒頭に載せるのですが、ISBNがついていない本だったので、代わりにセルフ書影を掲げておきます。 青銅…

岸政彦・柴崎友香『大阪』を読みました

大阪作者:岸 政彦,柴崎 友香発売日: 2021/01/27メディア: 単行本 私が生まれたのは大阪市内のとある病院ですが、物心つくまえに引っ越してしまったので、大阪の記憶はない。私にとって大阪というのは、母親が生まれ育った街であり、両親が出会った街であり、…

チャン・リュジン『仕事の喜びと哀しみ』(牧野美加 訳)を読みました

仕事の喜びと哀しみ (K-BOOK PASS 1)作者:リュジン, チャン発売日: 2020/12/23メディア: 単行本数年前から韓国の現代小説が書店で目立つようになっていたけれど、なんとなく機会を逃し続けてまだ一冊も読んでいなかった。現代韓国小説市場はフェミニズムとす…

四方田犬彦『愚行の賦』を読みました

愚行の賦作者:四方田 犬彦発売日: 2020/08/27メディア: 単行本書店で見かけて我慢できずに買いました。四方田犬彦の新刊! この分厚さがいい! 四方田犬彦は文章が上手いというのは勿論その通りなんだけど、さらに、興味の引き出しをたくさん持っているらし…

山尾悠子『山の人魚と虚ろの王』を読みました

山の人魚と虚ろの王作者:山尾悠子発売日: 2021/02/27メディア: 単行本『飛ぶ孔雀』で初めて山尾悠子を知って恋に落ちる勢いで好きになり、今回の新刊も喜び勇んで買いました。函入りで美しい装丁はさすが国書刊行会、気合入ってる! 寝る前に少しずつ読んで…

パティ・スミス『Mトレイン』(管啓次郎 訳)を読みました

Мトレイン作者:パティ・スミス発売日: 2020/11/21メディア: 単行本パティ・スミスの名前は一応知っていましたが、この本は訳者の管啓次郎に惹かれて買いましたが、結果的にパティ・スミスのことも好きになった。 河出書房新社から出ているのですが、装丁がい…

松本清張『昭和史発掘 13』を読みました

ノンフィクションシリーズ『昭和史発掘』、全13巻の最終巻を読み終わりました! 父親のお下がりの古い版で、主にお風呂の中でちょっとずつ読み進めていました。ブログ記事を確認したら、1巻の感想は2020年3月15日にアップしているので、ちょうど一年お付き合…

ジョゼ・サラマーゴ『白の闇』(雨沢泰 訳)を読みました

白の闇 新装版作者:ジョゼ・サラマーゴ発売日: 2008/05/30メディア: 単行本(ソフトカバー)「はじめての海外文学スペシャル2020」で紹介されていて気になってました。ようやく読みましたが、読み始めてから読み終わるまで結構時間がかかって、しんどかった…

松本清張『昭和史発掘 12』を読みました

ノンフィクションシリーズ『昭和史発掘』、12巻を読み終わりました。父親のお下がりの古い版でISBNがついていないので、リンクは無しです。12巻は、11巻で蹶起部隊が撤退した後の話になります。彼らがどのような処分を受けるのか、というところ。内容は以下…

橋本輝幸 編『2010年代海外SF傑作選』を読みました

2010年代海外SF傑作選 (ハヤカワ文庫SF)作者:ピーター トライアス,郝 景芳,アナリー ニューイッツ,ピーター ワッツ,サム・J ミラー,チャールズ ユウ,ケン リュウ,陳 楸帆,チャイナ ミエヴィル,カリン ティドベック,テッド チャン発売日: 2020/12/17メディア:…

ヨシフ・ブロツキー『ヴェネツィア 水の迷宮の夢』(金関寿夫 訳)を読みました

ヴェネツィア 水の迷宮の夢作者:ヨシフ・ブロツキー発売日: 1996/01/17メディア: 単行本結構前にブックオフで買ったものです。ちょくちょく見かけるので、ベストセラーになったんでしょうか。帯に「ノーベル賞受賞作家の小説、本邦初紹介!」と銘打ってある…

フリオ・リャマサーレス『無声映画のシーン(木村榮一 訳)を読みました

無声映画のシーン作者:フリオ・リャマサーレス発売日: 2012/08/23メディア: 単行本ブックオフで見かけて、好きそうな雰囲気だったので買いました。 何が好きそうだと思ったかというと、この作品のコンセプトです。母親が大事に持っていた30枚の写真を見なが…

橋本輝幸 編『2000年代海外SF傑作選』を読みました

2000年代海外SF傑作選 (ハヤカワ文庫SF)作者:エレン クレイジャズ,ハンヌ ライアニエミ,ダリル グレゴリイ,劉 慈欣,コリイ ドクトロウ,チャールズ ストロス,N・K ジェミシン,グレッグ イーガン,アレステア レナルズ発売日: 2020/11/19メディア: 文庫2020年が…

ジョン・ウィリアムズ『ブッチャーズ・クロッシング』(布施由紀子 訳)を読みました

ブッチャーズ・クロッシング作者:ジョン・ウィリアムズ発売日: 2018/02/26メディア: 単行本人生初のジョン・ウィリアムズ作品、じっくりゆっくり読んでいましたが、ついに読了しました。ジョン・ウィリアムズといえば『ストーナー』なのは知っているのですが…

ポール・シャピロ『クリーンミート 培養肉が世界を変える』(鈴木素子 訳)を読みました

クリーンミート 培養肉が世界を変える作者:ポール・シャピロ発売日: 2020/01/09メディア: 単行本面白かったという話を聞いて図書館で借りて読んだのですが……めちゃくちゃ面白かったので後日改めて買います! 「クリーンミート」=培養肉という、名前は聞いた…

松本清張『昭和史発掘 11』を読みました

父親のお下がりの文春文庫の古い版で読んでいる『昭和史発掘』11巻を読み終わりました。ISBNがついていなくて、新版は収録内容が違うので、リンクは無しで。10巻でついに決行されてしまった二・二六事件、11巻では蹶起部隊の撤退の様子が描かれます。二・二…

ねじれ双角錐群『来たるべき因習』を読みました

https://nejiresoukakusuigun.tumblr.com/post/632304404947681280/%E6%9D%A5%E3%81%9F%E3%82%8B%E3%81%B9%E3%81%8D%E5%9B%A0%E7%BF%92-strange-festival-speculative-fictionnejiresoukakusuigun.tumblr.com2020年秋の文学フリマで手に入れた一冊を読み終え…

管啓次郎『本は読めないものだから心配するな 新装版』を読みました

本は読めないものだから心配するな〈新装版〉作者:管 啓次郎発売日: 2011/05/31メディア: 単行本(ソフトカバー)2020年の終わりを締めくくる記事が、とても素敵な本の感想となることを嬉しく思います。詩人であり人類学者であり翻訳家であり、な管啓次郎の…

ラヴィ・ティドハー『金星は花に満ちて』を読みました

www.hal-con.net日本のSF界には、はるこんという行事があります。春に行われるコンベンションだから、はるこん。ゲスト・オブ・オナーとして海外作家を招いたり、ディーラーズルームで即売会をしたりというお祭り……なのですが、実は行ったことがありません。…

川野芽生『Lilith』を読みました

Lilith作者:川野芽生発売日: 2020/09/26メディア: 単行本正直なところ、読みました、というほど読めてはいないだろうと思う。 Lilith(リリス)は川野芽生のはじめての歌集で、Twitterで流れて来たためにその存在を知ることができました。 私は日頃から詩や…