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「かぐやフェス 2023」に行ってきました

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2023年11月18日(土)、京都にて開催された「Kaguya Planet」初のオフラインイベント「かぐやフェス 2023」に参加してきました。
Kaguya Planet」はオンラインを軸足にSF小説やレビュー記事を公開したり、SF小説コンテストを開催したり、アンソロジーを刊行したりと様々な活動をされているSFメディアです。以下、本記事では主催者団体のことを「かぐやさん」と呼んでいます。

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このたびオフラインでイベントするよ! 重大発表もあるよ! という告知がSNSでされたのを見て、親が京都に住んでいるので宿が確保できるという地の利もあり、思い切って参加してみました。結論としては行ってよかったの一言に尽きますが、やっぱり一般読者には参加のハードルが高いイベントだったことでしょう。なので勇気を出して参加した一読者としての感想を書いておきます。
かぐやフェスが今後も開催されることになったとき、参加に迷った方の参考になりますように。また今回は残念ながら参加できなかった方への、雰囲気のお裾分けができますように。



【会場でのマナー・ルールについて】
イベントが開催される前に、メールでイベントの詳細について連絡がありました。そこで会場でのマナー・ルールについて明文化されていたことが非常に新鮮で、嬉しく思ったのでまずそれについて書いておきます。というか、あのイベント運営のきめ細やかさが、こうして記事に残そうと思った大きな理由のひとつでもあります。あんなに安心して参加できるイベントはそうそうない。

まず写真について「SNSに写真をアップしてOKの人とNGの人で名札ストラップの色を分ける」というのが非常に効率的・経済的でよかったです。わかりやすくて安上がり!

そして何より、「ハラスメントや暴力行為の禁止」として無自覚な加害が発生しないよう事前に注意を促してくれたことがとても素晴らしかったです。かぐやさんがすべての参加者を大切に思ってくれていることが良くわかる配慮でした。

SNS上でだけ知っていた相手に対して、〇〇さんって男性/女性だったのですね、と何気なくかけた言葉。ミスジェンダリングの可能性がありませんか? 見た目だけで相手の性別や属性を判断する行為はやめましょう。(事前メッセージより抜粋)

かぐやさんのこうした心配りには以前から好感を持っていましたが、こうして主催者側が明示的に発信してくれることで、参加者の安心感はぐぐっとアップしますね。もし自分が主催サイドに立つことがあったらぜひ見習おうと思いました。よいお手本をいただきありがとうございます。


【タイムテーブルと軽食、参加者の方々について】
イベントは13時に開場、14時に開会、17時半に閉会。ブース出店者は12時半から入場可能でした。
開会から閉会までの間にコンテスト授賞式や新プロジェクト発表会、くじ引きなどのイベントが企画されていましたが、「ソーシャル」と呼ばれる歓談の時間に多くの時間が割かれているのが特徴的でした。出版パーティみたいなものに参加したことがないので比較ができないのですが、せっかく集まったのでお互いの親睦を深めてね、という意図での時間配分でした。「ソーシャル」の時間に他の参加者の方とお話したり、物販スペースで買い物をしたり、出された軽食を食べたりできました。普通にお昼ご飯食べてから参加したので割とお腹がいっぱいで、出された軽食があまり食べられなかったことが悔やまれてならない。美味しいトルティーヤとタコスだったので、腹に余裕があればもっと食べたかった……。

あと会の終盤でデザートとしてジュヴァンセルの高級焼き菓子「竹取物語」が振舞われました。噂には聞いていたものの食べるのは初めてで、あまりの美味しさに一人で感動していた。帰りに京都駅で見かけたので思わず買って帰ろうかと思ったけど、お高かったのと一人で食べられる分量じゃなかったので泣く泣く諦めました。私の中のパウンドケーキベスト3に入る逸品。

さて、多くの時間が割かれていた「ソーシャル」の時間について。
私はビビりなので今回のイベントではSFG関係者という建て前を最大限に活用したけれど、私自身は小説を書く人間ではなく、ただの読者です。ブログに読んだ本の感想は書くけれど、それでも視座としてはやっぱり読者です。
そんなイベントで総勢63名が参加された中、たぶん9割くらいは小説を書く人たちだったのでは……? それくらい、新進気鋭の作家さんがゾロゾロいらっしゃる贅沢空間でした。同行したSFG編集長はさすがに顔が広くいろいろ挨拶したりしてましたが、私は知っている人も少なくて名札をチラ見しては「ああ、あの人あの作者の……」などと思うものの、相手も歓談中だったりして、自分から突撃するほどの勇気もなくまごまごしていました。そんな中「V系SFの店」でブースを出していた渡邉清文さんが話しかけてくださり、私がブログで絶賛した『トランジ』の執筆者陣と引き合わせてくださるなどして構っていただきました。ありがとうございました! お話できて嬉しかったです。

文学フリマSF大会で好きな作品の著者の方をお見掛けすることはあるのですが、いきなり「あなたの作品が好きです!」となどと声をかけるのもおこがましい気がするし、難しいですね。いやもちろん感想もらえるのは嬉しいというのはそうなんでしょうけど、でもやっぱり緊張する。書くよりも話すほうがはるかに苦手だし、一度口にした言葉は覆せないし……。とはいえかぐやフェスでは「ソーシャル」という時間が設けられているので、他のイベントよりも話しかけにいくハードルは低めだったと思います。必要なのは勇気とタイミング!
あなたの作品が好きでしたということは何らかの形で伝えたいので、ブログという形で感想を書いているけれど、いざ目の前にいらっしゃるとあわあわしてしまって、後からあれも伝えておけばよかったなどと思ったり。とはいえ会場にいらした糸川乃衣さん、青島もうじきさん、稲田一声さんにあなたの作品が好きですと伝えられたので良しとしようと思います。また仕事ぶりを非常に尊敬している橋本輝幸さんにもご挨拶できて嬉しかったです。お話したすべての方のお名前をここで挙げることはしませんが、貴重なお時間を割いてお話いただいた方々、本当にありがとうございました。


【物販ブースについて】
ブース毎会計ではなく、レジ一本化会計でした。出品者は持ち込みの品と値段を事前申請して、お値段を書いた紙を販売物につけておく必要があります。イメージとしては、百貨店などで開催される古本市みたいな感じ。出品者がブースにいなくても販売できる仕組みということで考えられたようです。その代わりレジにはずっと誰かがいる必要があるので、運営側が負担を引き受けてくれたという印象です。ありがとうございました。

開催のタイミングが文フリの翌週だったのでだいたい先週と同じ顔触れでしたが、買いそびれていたものを買うことができてよかった。あと特製ペーパーや小冊子などもあり、見ているだけでも楽しかったです。一週間前の散財も忘れてそこそこ買いましたけどね!


【新しい理念と新プロジェクト発表について】
これが聞きたくて京都に駆けつけた。詳しい内容についてはかぐやさんの下記ページに記載がありますので、ぜひご一読ください。

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私は前からかぐやさんのファンで、活動の根底にある問題意識や理念をオープンにしているところとか、それをただのお題目にせずに現役の羅針盤として活用しているところとか、すごくいいなと思っていました。なので今回、新しい理念という発表の場に立ち会えたということにとても満足しています。行って良かった。共感するところが多く、大きく頷きながら聞いていました。こういう理念を掲げる企業がSFをメインに据えて活動していることに希望を感じる。未来も捨てたものではないぞ。

新プロジェクトは10個もあって、そんなにあるんかーいと思いました。すごいな。
矢継ぎ早に繰り出されるビッグニュースと独特の効果音に驚くのが忙しく、新しい情報を聞き逃すまいと全身耳にして聞いてました。

どの企画もめちゃくちゃ楽しみですが、一番嬉しかったのはマガジン創刊です。
何度だって言いますが私は前からかぐやさんのファンで、かぐやBooksから刊行される単行本はほとんど買ってるのですが、実は有料会員ではありません。なぜかというと、単純に、私が紙で小説を読むのを好む体質だからです。小説は紙で読むべきだ! という思想であるわけではなくて、電子で読めるなら読みたいのですが、どうしても頭に入ってこなくてやむなく紙でのみ読んでいます。この時代に電子が苦手って……と我ながら思うのですが、苦手なので仕方がない。
なのでかぐやプラネットを応援したい気持ちはあれど特典をまるで享受できないので有料会員については心苦しくも静観していたのですが、紙でマガジンを出してくれるなら話は別です。ありがとう! これで心置きなく会員になって応援できる!! 応援の機会を広げていただき感謝します。

アンソロジー5本ノックも大期待ですし(特に世界妖怪譚は絶対私の好きなやつ)、大木芙沙子さんの単著も今から楽しみ……2024年も良い年になることでしょう。


【お土産】
参加者全員にプレゼントしていただいたブック・キュレーター堀川夢さんの選書は、下記が当たりました。これ好きなやつでしょ……! 未読の作品なので手に入れなくては。

滅びの気配が漂う世界、老いた天文学者と取り残された少女がうつくしい北極で暮らしている。寒い季節に暖かいところで読みたくなる一冊。
リリー・ブルックスダルトン/佐田千織訳『世界の終わりの天文台』創元SF文庫


楽しい時間をありがとうございました。今後も応援しています。