好物日記

本を読んだり美術館に行ったりする人の日記

笹本祐一『ハレーション・ゴースト 妖精作戦PART2』を読みました

前作『妖精作戦』はソノラマ文庫で読みましたが、今回の『ハレーション・ゴースト』は創元SF文庫で読みました。本書はソノラマ文庫版と中身は同じなのですが、創元SF文庫版のあとがきもついていて、解説が小川一水です。あと表紙の雰囲気がイマドキの絵になっている。ラノベっぽいけど創元SF文庫なので挿絵はない。
ちなみに『妖精作戦』のほうも創元SF文庫で復刊していて、有川浩の解説がついています。

さて『ハレーション・ゴースト』は前作のメンバが学園祭に向けてドタバタ準備をしているときに怪奇現象が起きるという話です。主人公は沖田。榊とノブはわき役で、平沢はほとんど出てきません。
学園祭というのもまた学園ものの王道で、学生のとっての非日常イベントの最たるものです。教師によるお目こぼしがあり、いつもと違うテンションで夜遅くまでワイワイ騒いだりする。フィクションだから現実よりも少しグレードの高い、しかし学生であるという前提ルールからは大きく逸脱しない程度に普通の日常生活を彼ら登場人物は送っているわけですが、学園祭の空気はまた特別ですよね。
沖田たちは自主映画を上映するという出し物を計画しており、ギリギリまで編集作業にかかっています。演劇ではなく自主映画っていうのがそれっぽい。

 定員四人、住人三人の部屋に人間が詰まってわいわいと作業を続けている。床に座り込んでルーペ片手にフィルムをよりわける和田、編集用に、フィルムカッターなんて高級なものはないから安物のカッターでフィルムを切る真田、エディターをのぞきこんで榊を助手(アシスト)に使ってフィルムをつなぐ沖田監督。部屋に散らばるビールの空きカンや空のサントリーホワイト、ポテトチップスの空き袋などは前夜のクランクアップ記念打ち上げの名残である。
 机の一つにのっているばかでかい沖田所有のラジカセからは、気分を出すためさきほどから映画音楽がかかっているが、ステレオのマンシーニに耳を傾けるほど余裕があるのは一人もいない。(P.132)

そういえば少し前までフィルムなんでした。いまではデジタルのほうが安上がりだけれど。
マンシーニヘンリー・マンシーニのことだと思いますが、一切説明がないのがまた良い。

本作はいろんな作品がいろんな場面で顔を出しているのが特徴のひとつで、アニメなどでよく見る過去作品のオマージュを小説でもやってみたかった、と創元SF文庫版あとがきに書かれています。そして小川一水が解説である程度拾って元ネタをメモしています。もちろんすべてではないけれど、これだけ見てもすごい数だとわかる。読むのも楽しいけど、書くのも楽しかっただろうなぁ。

過去作品のオマージュ以外にも、時系列の工夫や小道具の魅力など面白いところはいくつもあります。学生っていいなぁ。大人は大人で楽しいので戻りたいとは思わないけれど、大人になってから学園ものを読むのも良いですね。ノスタルジックな味わいがある。高校生が高校生主人公の小説を読むのと、大人が高校生主人公の小説を読むのとでは味わい方が違うのは当然ではあるのですが、面白く感じる場合と違和感を感じる場合があるかもしれません。逆に大人をターゲットにした学園ものもあるはずだ。
学生をターゲットにした学園ものを大人が楽しむとき、教師視点で楽しむという方法もあるのですが、本書に教師はほぼ出てこないのでそれは当てはまらない。同じ学園の学生のひとりとして、彼ら主人公たちの活躍を憧れの目で見ている。タイムスリップしたみたいだ。

妖精作戦シリーズ、続けて読んでいく予定です。