好物日記

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京劇「西遊記之白骨精」を観てきました

www.taipeieye.com

先日台北に行った折、前から気になっていた京劇を鑑賞してきました。
台北戯棚(TAIPEI EYE)という劇団によるもので、台北市内の専用劇場で月水金土の夜に上演しています。
今回はオプショナルツアー予約サイト「ベルトラ」からチケットを買いました。1時間の公演に加えて、待合ロビーで記念撮影ができたり、琵琶の生演奏が聞けたりします。平日公演のお値段は471TWD、日本円で1700円弱(2019年9月現在)です。

1700円ですよ!素晴らしいな台湾。見ず知らずの異国の文化、言葉だってわからない、話も多分馴染みがない。でも1700円だったら行ってみようかなって思うじゃないですか。演じているのが学生さんだったからリーズナブルにできるのだと思いますが、学生側からしても定期的に発表の場が提供されているというのは良いですよね。観客としても文化への理解も深まるし、上手い仕組みだ。最初の一歩を踏み出してもらうために敷居を低くしておくことは必要な処置でしょう。
この劇団の公演はほぼ完全に入門者向けになっていました。馴染んでもらおうと工夫しているのがよくわかる。プログラムも日本語版が用意されていて、字幕も英語と中国語と日本語があり、日本人に優しい対応でした。

さて内容ですが、演目は時期によって変わるようです。私が行ったときは西遊記の一行が白骨精という妖怪と戦う話でした。
西遊記は子供向けに抜粋したストーリーをいくつか読んだような読んでないようなうっすらとした記憶しかなく、あまり詳しくはないです。三蔵法師がお経を求めて天竺へ旅をし、孫悟空猪八戒沙悟浄がそのお供をするということくらいしか知らない。ゴダイゴガンダーラは歌えるけど、なんで旅を始めたのかも定かではない。しかし観劇していたらだんだん思い出してきました。そういえば孫悟空は如意棒を持っているんだった。分身の術が使えるんだった。そういえばそうだった。

白骨精は、自分のナワバリに旅の一行がやってくることを知り、三蔵法師の肉を喰って不老不死になろうと企みます。しかし孫悟空の強さは尋常ではなく、村娘に化けても老婆に化けても正体を見破られてしまう。それでもやっとのことで三蔵法師の身柄を押さえた白骨精、さぁ宴だ!というそのときに白骨精の母親に化けていた孫悟空が登場、すんでのところで三蔵法師は助けられ、とうとう白骨精は孫悟空にやられてしまうのでした。

ストーリーとしては上記の通りですが、観ていて非常に気になったのが三蔵法師の立ち位置です。孫悟空が懸命に「あの村娘は妖怪です!よく考えてください法師さま、こんな人里離れたところであんな娘が突然いるわけないでしょう!」と訴えるにもかかわらず、娘が「お寺のお坊様方に精進料理を届けに行くんですの。ご一緒にいかが?」などと誘えば「なんて信心深い娘さんだ!」などとあっさり騙されてしまうのでした。こんな頼りないのか、三蔵法師って?彼の肉を喰えば不老不死になれるくらいの存在なのに、彼自身には霊力はそんなにないのか?純真な娘か妖怪かくらい、偉いお坊さんならわかりそうなものだけどな。そこがコメディタッチな演技になっていたので、わざとなのでしょうけれど。
まぁそんなことを言っていたら話は進みません。それに京劇のメインはストーリーではなくてアクロバティックな大立ち回りなんだろうと思います。大立ち回りに至るまでの道筋は劇で表現されてはいるものの、剣舞など、舞台の上でのパフォーマンス部分に長い時間が割かれていたので。チャンバラみたいな感じですね。日本で京劇に一番近いのはおそらく歌舞伎だと思いますが、舞がメインの演目ありますもんね。多分京劇にも、舞が見どころの演目とストーリーで泣かせる演目があって、今回のは前者だったのだと思われる。言葉が分からなくても楽しめるのは前者ですね。

役者さんの衣装が凝っていて、妖怪は一目でそれとわかる触角を頭に生やしているのですが、どうやら羽根でできているらしいそれを自在に操るところが格好良かったです。
あと私は夢中で舞台を凝視していたのでやりませんでしたが、写真なら上演中でも撮影OKでした。録画はNG。

セリフは中国語だけど日本語字幕も出るし、雰囲気味わえてお値段リーズナブルだし、満足でした。次に行くなら演目で選ぶことになりそう。土曜の夜は少し時間が長い(そのぶんお値段は高くなる)ので、そっちも少し気になりますね。日本で京劇の公演がかかったときの気持ちの壁はかなり低くなった感じがします。本格的な京劇も見てみたいな。中国に行くときに観劇してみようかなぁ。