先日台北に行く機会があったので、一人でいそいそと国立故宮博物院に行ってきました。人生2回目の来館。
国立故宮博物院には台湾が誇るお宝の山が収蔵されており、本気で観ようと思ったら一日では足りません。しかし来館も2回目ともなるとだいぶ心に余裕があって、この展示は前回も観たから好きなとこだけにしようとか、ある程度好みを絞って観ることができました。
時は9月、外は快晴でじっとしているだけでもじんわり汗がにじむ気温でしたが、中は冷房がガンガン効いていて寒いくらいでした。前回もそうだったから知っていたはずなのに、喉元過ぎると忘れるタイプなので再び寒さを味わってしまった。
ちなみに国立故宮博物院には、中華民国時代に共産党に押された国民党が台湾へ疎開させた文化財が収蔵されています。もともと宝の山だったところから「これだけは!!」と厳選したものを運んでいるので、精鋭揃いで全体的にレベルが高い。というか厳選してこの量か!って思いますけど、殷の時代から揃っていることを思うとこれでもかなり削ったというのはわからなくもない。すごいよなぁ、中国文明。
さて展示内容ですが、事前にHPを確認した際に気になっていたのが「故宮動物園」という企画展です。
山のような収蔵品から動物にまつわるものをピックアップして展示されています。お正月の東博みたいな雰囲気。思っていたよりも展示点数は少なかったのですが、十二支の動物たちや魚の絵などがなかなかにマニアックで楽しかったです。虎はめちゃくちゃ格好いいくせに、猫がびっくりするほど可愛くなくてひとりで笑っていました。
あまり気にしていなかったのに、めちゃくちゃ面白かったのが下の「實幻之間」という企画です。日本語企画名は「うつつとまぼろしの間で」。
※下記リンク先は音が出るので気を付けてください。
これすごいんですよ!!!
戦国~漢の玉器において急激にデザインが洗練されていったことに注目して、錯視という観点から「どういうデザインにするとどういう視的効果が得られるか」というのをパターン別に分けて展示しているんです。
そこまでパターン化できるくらいの収蔵品があるというのは故宮だから納得なのですが、まとめ方が洗練されていて見やすくて素晴らしい。
たとえば一本の線を引くとする。
直線「|」はただの線だけど、曲線「 )」になると左から右へ力が加えられたことが視覚化される。張力ですね。
また「~」なら、左半分は下から上、右半分は上から下への圧力を、自然に眼は感じ取る。
ほかにもデフォルメするときの最小要件や角度の効果など、実際の玉器を使って解説していくというめちゃくちゃ面白い企画でした。実際にパネル見た方がわかりやすいと思うので写真貼っておきます。上の展覧会リンクに飛ぶと、動画も載っているので、興味のある方はぜひ。
さらに錯視つながりで、杉原厚吉さんの錯視作品が複数展示されていました。鏡に映すと違う形にみえるやつ、本当すごいな…
そして前回行きそびれた、博物館横の至善園という庭園にもお邪魔してきました。
中国庭園なのかな?大きな池と、周りを取り囲む東屋。屋根のある渡り廊下には随所にベンチがくっついていて、座ってぼんやり風に吹かれることもできます。日本庭園は中国庭園と空間配置が似ているので落ち着く。
その他にも、前回も見た明代永楽帝の磁器展示で甜白のエレガントさにため息をついたり、清代皇室の陶磁器コレクションに目を奪われたり(宋のやわらかな色味の青磁もいいけど、清の康熙帝以降の安定した華やかさも捨てがたい。そして唐の三彩のダイナミックさも忘れてはいけない!)、清の皇帝に献上された精巧な玉器に感嘆したり、鉄器にあしらわれた獣面のユーモラスなデザインに和んだりしていたら一日経っていました。書も良かったなぁ。
台北からのアクセスも良いし、良い博物館美術館というのは何度リピートしても楽しめるものだなと思いました。きっとまた行くことになるでしょう。