好物日記

本を読んだり美術館に行ったりする人の日記

安芸の宮島に行ってきました

もう一か月以上前になってしまいましたが、2019年の大型連休の頃、宮島に行ってきました。
平家物語を読んで以来、一度は行こうと思っていた場所だったので、やっと!!という感じです。
島に宿をとって、夜のライトアップも堪能して帰ってきましたが、一泊二日だったので観尽くした!というほどではなく、ちょっと物足りなさを感じながら後ろ髪をひかれて帰ってきました。また行くことになるでしょう。

とはいえいろいろ堪能したので記録しておきます。神域でした…

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厳島神社の大鳥居、朝の満潮時。

羽田から飛行機で広島に行き、そこから電車で宮島口へ。フェリーに乗れば宮島に到着です。
島に到着した夕方は干潮で、大鳥居を歩いてくぐれるほどに潮が引いていました。足がすっかり見えた大鳥居というのはちょっとコミカルで、真ん中をちょろちょろと流れるところにヤドカリがいた。潮干狩りしている人もいました。良く採れそう。

日が暮れるにつれだんだんと水位が上がっていったのですが、夕焼けの美しさが見事でした。三日月が大鳥居の上にかかっているのを観てしまって、うっとりしていました。しかし鳥居って、あの形状がシンプルイズベストというか、まさにこれ神域!という感じでとても好きです。なんであんなに美しいんだ。

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夕暮れの大鳥居。劇的な効果はだいたいカメラのおかげ。
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夜の大鳥居。三日月とのツーショット。

今回は時間の都合で山には上らず、大聖院という大きなお寺にも足を踏み入れずじまいでしたが、海沿いをぶらぶらと散歩してあなご飯を食べ、寄せては引く波をぼんやり見つめたり鹿にちょっかいかけたりしていたらあっという間に時間が経ってしまった…
とくに厳島神社の宝物館が非常に見ごたえがあったので皆様におすすめしたい。中は撮影禁止だったので写真はありませんが、一時間くらい楽しんでいました。

宝物館の目録がなかったのでメモを取るしかなかったのですが、特に印象深かったものをいくつかご紹介します。

■平家納経(複製)
複製だからといって侮ってはいけないというか、複製でこれって現物どんなよ、ってくらいの豪華絢爛きらきらぶりでした。権力者というのは後ろ暗いことも一つや二つじゃないでしょうから、心の平静を保つために功徳を積んでおきたいと思うのでしょうが、それにしてもめっちゃ豪華だ。功徳を積むというだけではなくて、権力を誇示するという意味もあったのかな。ケースも豪華だったのですが、写経の紙とか、巻物の中心の、なんていうんだあれ、芯棒?みたいな部分も、なんというか一分の隙も無い感じ。権力者ってすごいなぁ、ここまでやっちゃうのか。これは美術品だわ。かなりじっくり眺めてしまった。字が綺麗でした。
たまに本物を展示することもあるそうです。それはそれで、劣化具合を観てみたい。

■偕老同穴(かいろうどうけつ)
海に棲む生物のミイラみたいなもの。白いレース編みのような形状で、円錐に近い形をしていて、いかにも珍品っぽくつつましく木箱に入れられて綿にくるまれていた。曰く結婚の縁起物の一つらしいんですが、あとで調べたらそれ自体は海綿の一種なのだそうです。展示ケースの中に手書きの毛筆でこまごまと由来が書かれていて、英語の説明ではたった3行でまとめられていて、その温度差に笑ってしまった。河童の手のミイラみたいな扱われ方なのかな?なんとも不思議な展示物でした。触ってみたかった。ぱきっと割ってみたいけど、案外硬いのだろうか、どうなのかな。

常盤御前と今若丸、乙若丸、牛若丸の絵
常盤御前源義朝の側室で、牛若丸はのちの源義経です。母である常盤御前が3人の小さい子供を連れている場面を描いた絵なのですが、問題は彼女が胸に抱いている、まだ乳飲み子の牛若丸。彼の胸元にがっつりと、金属の若干錆びついた錠が刺されているのです。正直めっちゃ怖い。なんでこんな頑丈そうな錠が、よりによってまだ赤ん坊の子供にぶっ刺さってるんだ。
しかしこれにはちゃんと解説がついていました。曰く夜な夜な赤ん坊の泣く声がして夜の当直の人が悩まされていたので、絵の中の牛若丸に錠を刺したところ、泣き声がしなくなったとのこと…なんだその怪談!夜泣きしてるのが牛若丸だって、なんでわかったんだろう。詳しくメモしてこなかったのですが、たしか戦前の昭和か大正か、それくらいのエピソードだったはずです。結構最近だなと思った覚えがあります。板に描いたにしては色がしっかり残っていたので、絵自体は古くても江戸時代の筆じゃないかなぁ。これだけ錠が異彩を放っていて、いらんパワーを感じました。


ほかにも宥座の器という道徳教育器具とか、蘭陵王の絵とか、備前が誇る刀や焼物とか、古いものから新しいものまでいろいろそろってました。展示ケースも立派で、たぶん明治か大正くらいに作られたであろう、いい造りでした。ナンバリングがおしゃれだった。あれも一種の奉納かな。

ほかにも千畳閣で奉納額を眺めたり、珍しい青銅の鳥居を眺めたり、野生の鹿を眺めたりして過ごしました。

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社殿と反橋
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三翁神社の青銅の鳥居
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四宮神社の石が積まれた鳥居
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五重塔、千畳閣へ続く階段

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社殿から眺めた大鳥居

仕事やらなんやらでとても疲れているときだったので、実に癒されました。海はいいな。また行きたいです。