好物日記

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そごう横浜「深堀隆介 ―金魚愛四季ー」に行ってきました

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コロナ禍と暑さのおかげで数か月ほど引きこもっていましたが、久々に展覧会に行ってきました。そごう横浜の催会場で開催中の、深堀隆介の個展です。やっぱり展覧会は良いものだ!
深堀隆介は、2018年の夏に平塚市美術館で開催されていた個展(「深堀隆介展 平成しんちう屋」)を観てからすっかり好きになりました。今回の展示では2019年・2020年の新作もいろいろ出ていて大満足。金魚といえばなんとなく夏の風物詩って感じだけど、夏以外の金魚も堪能できてよかった。

深堀隆介の凄さの前提は、器を満たした樹脂の中に描かれた金魚が「まさにそこにいる」ように見せる技術の巧さだと思います。何層も何層も重ねた樹脂に少しずつ色を足していくことで立体的に見せ、奥行きを出している。今まで動いていたかのような、今にも動き出しそうな。それでも作品の中に閉じ込められた一瞬は、後にも先にも世界が決して経験しえない一瞬であるっていうのがさらに良い。
でもやっぱり深堀作品の肝は「器」と「趣向」にあると思うので、そういう意味で金魚不在の「美愛」とか、道で拾った空き缶に金魚を泳がせる「コーヒー金」、アルミ薬缶の中で泳ぐ「宇宙茶」なんかが私はたまらなく好きです。
とはいえいくら言葉を連ねても、百聞は一見に如かずでしょう。実物観るのが一番なのですが、公式HPで作品の美しい画像が公開されていますので、ぜひご覧ください。ぜひぜひご覧ください!それはもう美しいですよ。

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代表作である金魚酒の新作も良かった。金魚酒というのはお酒の一合升を器にした涼やかな作品シリーズで、とくに桜の花と一緒に閉じ込められた金魚が私のお気に入りです。桜の花びらの、升の縁にへばりついたやつの花弁の縁がちょっと茶ずんでいるところが好き。
金魚酒は瀟洒なところが素敵だけど、骨董机の引き出しとか水溜まりとか、変なところに潜んでいる金魚も異境感あってたまらない。川に金魚が泳いでいたら、それは異境に迷い込んだという合図だ。

モデルになった金魚たちの最期をスケッチした資料(デスノートと題されていた)も展示されていたのですが、愛に溢れていてとても良かったです。私は一度も金魚を飼ったことがないけど、病気で死ぬことが多いんですね。水替えとかが命取りになることがあるらしく、品種によってはかなりデリケートな扱いになるようす。でも展示品では鱗の数とかまでメモしてあって、資料として供養されているところに非常に好感を持ちました。愛だ。
しかし金魚ってほんとにいろんな種類がいるもんですね。色と目玉と鱗と鰭がポイントなのかな…

今回の企画は「金魚愛四季(いとしき)」ということで、春夏秋冬4つのテーマでの展示が面白かったです。春の金魚は当然ながら、秋や冬の金魚もいいものだと知りました。あと金魚の絵もあわせて展示されていて嬉しかった。あの鰭の美しさよ……天女の羽衣のようだった。

横浜そごうでの展示は8月末までですが、関東にお住まいの方はパナソニック留美術館で2020/9/22まで開催中の「和巧絶佳展」でも深堀隆介作品が見られるようなので、ぜひそこで実物をご覧ください。(私も行くつもり)

今回美しい金魚を山ほど堪能できたので、これで私の夏は終わった…