好物日記

本を読んだり美術館に行ったりする人の日記

東京オペラシティアートギャラリー「カミーユ・アンロ 蛇を踏む」展に行ってきました

www.operacity.jp

毎年「ぐるっとパス」という首都圏の美術館・博物館割引チケットを買って、有効期間2か月で狂ったようにミュージアム巡りをしています。2019年度も当然やります、そろそろ出番だ、ということで対象施設の展示一覧を見ていたら、本展示が目に留まりました。

東京オペラシティアートギャラリーはたいてい素敵な展示をやっていて、前に行ったのは確かイサム・ノグチだったか。六本木ほどとんがりすぎていなくて、全体的に好みの展示をやっていることが多い印象。カミーユ・アンロの名前は聞いたことがなかったけど、「蛇を踏む」って、これは、いいタイトルだぞ、ということで観に行くことに決定。2か月限定のチケットを封切る。

そしてこれが、見事に大当たりだったのでした。

事前の情報収集はほとんどしないでいて、恥ずかしながら会場に到着して初めて気が付いたのですが、展覧会タイトル「蛇を踏む」は、川上弘美の小説からきているのでした。聞いたことあると思ったよ!というかすぐに気が付かなかったの、何故だろう。実はまだ読んでいないからか。
会場は4つのゾーンに分かれていて、最初のゾーンが書物×生け花というもの。<革命家でありながら花を愛することは可能か>というゾーンタイトルからして、ぐっとくる。

草月流のいけばなに触発され、2011年から継続的に制作しているシリーズ。シリーズのタイトルは、マルセル・リーブマンによるレーニン伝の一節からとられたものであることをはじめ、各作品はそれぞれ一冊の本に由来していて、題名や著者、花材名、本の一節が作品とともに展示されます。(展覧会パンフレットより抜粋)

生け花は草月流の協力とのことですが、どこまでがカミーユ・アンロのアイデアなのかはよくわからず。デザインをして、花の調達や実際に活けるところは草月流のお師匠さんがやったのかな?王道っぽい生け花もあれば、これは果たして生け花なのか…というようなアーティスティックなのもあって、面白かったです。特にテーマとなっている本と一緒に見ることになるのが面白い。本好きにはたまらない企画だ。日本の女性作家の本が多かったのが印象的。そして展示作品の中では、ヴェルヌの『地底旅行』と、ロレンスの『チャタレー夫人の恋人』が特に好きでした。

2つ目のゾーンはドローイング<アイデンティティ・クライシス>。ポップなタッチでさらりと書かれた絵画が数枚飾られていました。なんていうか、タッチが西洋だなという印象。S字のようなカーブが複数のドローイングに入り込んでいて、あれはなんだったんだろう。ちょっと不安定な感じを醸し出しているのか?でもユーモアのある雰囲気で、ちょっと皮肉っぽい感じがフランスだなぁ。

3つ目のゾーンは部屋いっぱいに広がる青い空間。<青い狐>と題されたもので、部屋いっぱいを使った展示です。4つの壁を「最善律:はじまり」「連続律:ひろがり」「充分理由律:限界へ」「不可識別者同一の原理:消滅へ」というテーマに分けて展示をすることで世界を表している…のだと思う。観念的でよく分からなかったけど、展示されているものからなんとなくいいたいことはわかる、気がする。パンフレットに解説っぽいことが書かれていたけど、正直よくわからなかった。けどまぁ、物質主義による衰退を嘆いているのかな、とかそんな印象。多分パンフレットの文字も展示の一つなのだけど、観た方が早い、とも思う。頭の中のおもちゃ箱をぶちまけたみたいなオブジェクト群はすごい。よくまぁこんな雑多なものをこんな広い部屋に配置したな。思い出したように動く、おもちゃの蛇が印象的でした。ふうん、蛇ね。かれは4つの壁のどこにも属していなかったな。

最後のゾーンは映像作品<偉大なる疲労>。13分の映像ですが、かなり好きでした。架空の天地創造スミソニアン博物館の標本たちと、聞き覚えのない神々の名前と、PCのデスクトップ画面と。映像とともに流れる語りと音楽も印象的。不思議な13分、何度でも観られるけど、なんかずっと観ていたらちょっと平衡感覚狂いそうだったので、一周で出ましたが。すごく面白かった。

カミーユ・アンロはまだバリバリの現役だし、これからもいろいろ活躍するだろうから今後も展覧会とかあったら是非行きたいです。とても面白かった。