好物日記

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EXPO‘70パビリオン『1970年大阪万博『ビフォー・アフター』展』に行ってきました

www.expo70-park.jp

『ビフォー・アフター』展に行ってきましたというよりは、EXPO‘70パビリオンに行ってきましたという内容なのですが。
大阪の万博記念公園は過去にも行ったことがあるのですが、そのときの目的地はみんぱく(国立民族学博物館)、および大阪日本民芸館で、パビリオンに行ったことはありませんでした。
今回はいい具合に時間が浮いたので、パビリオンに行ってみることにしたのですが、いやぁ、正解でした。予想していた以上に面白かったです。

EXPO‘70パビリオンは当時「鉄鋼館」と称されていた建物をリニューアルしたもので、今は大阪万博のあれこれが常設展として展示されています。しかし建物の大部分は「スペースシアターホール」という未来感満載のホールに占められていて、ホールの中には入れないけれどガラス越しに中を窺うことができます。
テンションが上がるのはその「スペースシアターホール」で、なんと鉄鋼館は建物自体が楽器というテーマだったとのこと。なんだそれ、『零號琴』か!世界に誇る武満徹のプロデュースによってつくられた音響装置で、数多くのスピーカーが天井からぶら下がったり床下に仕込まれたりしていて、音楽とともにレーザー光線を使った演出が行われたのだという。
リニューアルオープンしたスペースシアターホールでも音楽と光のデモ演出が行われています。観ていて楽しかったけど、やっぱりホールの中から観賞したいですよね。1970年当時の技術でも、スピーカーの場所などがしっかり計算されているし、今でも十分楽しめるはずだ。体感したい。人数限定の予約制でもいいから、中に入れてくれないものかなぁ。

そして特別展である『ビフォー・アフター』展でもうひとつ、私の興味を撃ち抜いたのがフランソワ・バシェによる音響彫刻です。『零號琴』の音響彫刻は「音だけで成り立つ彫刻」だったけど、普通名詞としての音響彫刻は「音を出すことを要素に含めた彫刻作品」のことなんですね。視覚にも美しく、聴覚にも訴える。そんな素敵なものがあったのか…。実際どんな音なのか気になって、後からyoutubeで演奏動画を見つけて観ましたが、精神が不安定になりそうな音色が非常に良いです。なんという未来感!SF映画のBGMっぽさがすごい。いいなぁ、好きだ。シュールレアリスムのような雰囲気ありますけど、系統としては別なんですね。

また常設展では他にどんなパビリオンがあったのか、当時のどんな先端技術が使われたのか、この万博で市民権を得たものとして何があったのか、などが展示されていました。残念ながら時間の都合で多少端折りながら観ましたが、しっかり読んで観てたらかなりの時間を過ごせることでしょう。パビリオンのデザインだけでもかなり楽しめる。映像も流れているので、それも面白そうでした。ちらっと観ましたが、本当に、すごい人出だったんだな。
特別展では解体されたパビリオンや展示物のその後がまとめられていて面白かったです。ラーメン屋になったりカナダに移築されたりしていました。町おこしのために買い取られたパビリオンが結構あったみたいですね。しかしラーメン屋とは…

当時の大阪万博が本当にすごかったんだなというのが、参加したプロデューサーやアーティストの面々です。丹下健三岡本太郎、黒川記章、磯崎新小松左京イサム・ノグチ四谷シモン安部公房武満徹、などなどなど!!

しかし過去の栄光を振り返って悦に入ってばかりいても仕方ないようにも思うので、未来へ目を向ける流れに持っていきたいですね…。2025年にもう一度大阪万博するつもりらしいですけど、大丈夫か?これを越えられるのか?だって1970年の大阪万博って、今見てもめちゃくちゃ面白いですよ。2020年の東京オリンピックもそうだけど、過去の栄光に戦いを挑んでいるわりに負け戦であることを自ら容認している雰囲気がする。上と下との温度差だろうか。つまらない未来にしたくないというのは同じ気持ちだけど、そっちの道に行く気はないというか、うーん…同じ枠組みで返り咲きたいというのはどうしても懐古趣味っぽくなっちゃうので、あんまり好きじゃないんですよね。本当の意味での進歩ではないから、あまり意味がないような気がしてならない。
どうせならこれまでやったことないことをしようよ。見たことないものが見たいじゃないか。

などなどいろいろ考えたことも含めて、とても面白かったです。さすがに展示資料の量がすごい。時間があるときにもう一度行って、ゆっくり観たいなと思いました。そして岡本太郎の「太陽の塔」も、次は内部見学しようと思いました。また来よう。