好物日記

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「KEK一般公開2019」に行ってきました

www.kek.jp

2019年9月1日に、茨城県つくば市にある高エネルギー加速器研究機構(以下、KEK) のオープンキャンパスに遊びに行ってきました。秋葉原からつくばエクスプレスに乗ってつくば駅に到着後、シャトルバスで約20分。ちょっとした小旅行です。

KEKについては前々から気にはなっていたのですが、一般公開のチャンスは年に一度しかないというのもあって、行けずじまいでした。ただ今年、噂の『三体』を読んで高エネルギー研究に対する興味が高まったので、この勢いで行くしかない!と思い出かけた次第。正直物理学も化学もとても苦手な学生だったので何の知識もないのですが、メカメカしい機械が好きなので、ご機嫌で見学していました。
とはいえ施設間をバスが走るくらいに広い構内なので、とても全部回りきることはできません。じっくりゆっくり見ていると、尚更時間がかかります。
ということで、今回私が見学できたのは以下の3つのみでした。

- コッククロフト・ウォルトン加速器
- フォトンファクトリー
- SuperKEKB 加速器

「コッククロフト・ウォルトン加速器」は1972年から使われてきたレトロな加速器です。サイバーパンクっぽいフォームがどこか懐かしく、丸みのあるデザインはかわいらしい印象。サイバーパンクが1980年代のものであることを考えると、コッククロフト・ウォルトン回路のほうが先で、それをそのまま宇宙に持っていったイメージがサイバーパンクなのかもしれない。ああいう機械をデザインするとき、機械としての効率のよさという観点が第一でフォルムが決まると思うのですが、それ以外の部分のデザインはどうやって決まるんだろう。デザイナーさんがいるのだろうか。いるなら、どの程度デザインを気にするのだろうか。なるべくしてなった形なのか、ある程度遊び心があるのか。
機器はとにかくでかくて迫力があったのですが、建物入口に飾られた実験成功記念の品々にもぐっときました。「1976年3月4日 陽子加速成功」の乾杯のあと、ワインの空き瓶に書かれた署名とか、もはや一種の聖遺物だ。名前のある誰かのチームが計画して実行して成功したんだなぁというのがすごく伝わってくる。

フォトンファクトリー」は物質研究のゾーンです。加速器で加速した電子がカーブするときに発する放射光を利用して、ミクロなレベルで物質の構造を研究しているのだとか。素粒子実験では放射光が邪魔になるので、なるべくカーブしない巨大な加速器が必要になる一方で、わざと放射光を作り出して物質研究に使っているというのが面白い。薬の開発や、身近なところでは化粧品の分析などにも使われているのだとか。
加速器自体も見学することができるのですが、赤青黄に色分けされた機体がなんだかポップでおもちゃみたいでした。役割別にカラーリングしておくとメンテナンスのときなどにわかりやすいんだろうなぁ。

「Super KEKB加速器」は本命でした。「未踏のルミノシティを目指す!」というキャッチフレーズが掲げられていましたが、ルミノシティのシティはダイバーシティのシティと同じシティであって、キョート・シティのシティとは違うんですね。ルミノシティというのは加速器の性能を表すもので、ルミノシティが高いほど素粒子反応が起きやすいと評価されます。つまり、衝突型加速器としての性能が良い(結果が得られやすい)ということになる。
SuperKEKBでは全長3kmのうちの約200メートルを、ひたすら歩いて見学できます。同じような機器が同じような顔して並んでいるだけなので、つまらない人はつまらないだろうなぁとは思いますが…
個人的に楽しかったポイントは、機器に貼られたラベルです。何年何月誰々検査、と書かれたラベルが割といろんなところに貼られていて、人の作業の名残にストーリーを感じる。機器は基本的に御膝元の日立製なのですが、たまにロシアのラベルが混じっていて、こういう分野が得意な会社なんだろうなあとか想像すると楽しい。ぐるぐる巻かれたコイルなんかも、とってもメカメカしくてテンション上がります。

SuperKEKB加速器施設の入り口でパンフレットをもらったのですが、加速器についてすごく丁寧に説明されていて良い資料でした。フォトンファクトリーにいた職員さんもそうでしたが、全体的に説明スキルの高い人が多い印象。皆さん親切でした。
全体パンフレットが入ったトートバックも防水仕様のしっかりしたバックで、デザインも凝っていて良い品でした。無料でこんなんいただいてしまって…
あと3号館には展望台があって、敷地内外を一望できたのですが、上から見てもやっぱり広い敷地だった。

今回見逃した施設もありますし、研究者の方による一般公開セミナーなども面白そうだったので、予定が合えば来年も行きたいなと思っています。