好物日記

本を読んだり美術館に行ったりする人の日記

国立科学博物館『恐竜博2019』に行ってきました

dino2019.jp

夏といえば、恐竜!
日本の夏の風物詩となっている恐竜博ですが、毎年恐ろしく並ぶことを知っているので実は滅多に行きません。しかし今年はにわかに古生物熱が高まっていたので、空いていそうな頃合いを狙ってふらりと出かけてきました。大人も子どももみんな楽しそうだったのが印象的でした。

2019年の恐竜博の目玉は、デイノケイルスとむかわ竜です。
デイノケイルスは2メートル超の巨大な前足の持ち主で、本展ではモンゴルのゴビ砂漠で発掘された全長11メートルにもなる全身復元骨格が展示されています。モンゴルは世界的にも恐竜化石が多いゾーンらしく、ほかにも恐竜化石が複数展示されていました。
もうひとつの目玉であるむかわ竜は、北海道の恐竜です。福井が恐竜化石の名産地であることは知っていましたが、北海道でも大きな恐竜の化石が発掘されていたとは知りませんでした。本店ではむかわ竜の全身実物化石が展示されています。

本展は入場するとまずは恐竜研究の歴史を紹介するゾーンから始まるのですが、自分の子供時代と比べて研究がかなり進んでいることを実感しました。私が子供の頃の恐竜はトカゲのオバケみたいなイメージで、蛇やワニに似た外皮をしていると思っていた。きっと触るとひんやり冷たくて、少し硬くて、暗褐色の色をした、ゾウやサイのような肌のイメージだった。
羽毛が生えた恐竜もいたこと、ある種の恐竜は案外カラフルだったことなど、研究が進んで明らかになった事柄は本を読んで知ってはいたけれど、実際に研究成果としてここまで堂々と「定説です!」と展示されると時代の流れに圧倒される。今の子供たちはこれを恐竜のスタンダードとして認識しているんだなぁ。認識のスタート地点が時代によってどんどん変わっていくのは面白いですね。
ちなみに恐竜研究史ゾーンでは「ディノサウロイド」の紹介まであって、展示内容の多様性に感動しました。こういう異端的な思考実験の結果を無視せずちゃんと紹介してくれるところが、非常に好ましかったです。

また、恐竜の一部が鳥に進化したというのが定説として紹介されているところにも時代の変化を感じました。ミクロラプトルという四翼の恐竜がいるのですが、このイメージ図が実に幻獣っぽくて大変良かったです。後ろ足にも羽があるんですよ!実在したんですよ、こういう生物が!
しかし鳥類の遠戚だと思えば、カラフルな羽毛を持つ恐竜がいたというのもなんだか納得できてしまう。今回の目玉の一つである巨大なデイノケイルスも、本展のCG画像(NHK提供)では頭の上にトサカみたいな赤い羽を付けていてすごく鳥類っぽかったです。イメージとしてはダチョウのオバケだ。

NHKとタイアップしている関係上か、本展では随所でCG画像が流れていたのですが、イメージがわきやすくて臨場感があってとても良かったです。子供たちも釘づけでした。やっぱり映像作ってくれるとテンション上がりますね。
ただ、あくまで現時点での研究成果によるCGなので、今の子供たちが大人になったときには全然違うCGがスタンダードになっている可能性は大いにあります。これが「正しい答え」ではないんだよ、ということは、もう少し大きくなったらわかるかな。展示する側の研究者も悩んだのではないかと思うのですが、興味の入り口としての展示では、やっぱりCGはあった方がいいと思います。
なお展示の仕方については、展示ケースの上部にキャプションを配置しているものが多く、見やすくてよかったです。少し後ろに下がってキャプションを読む層と、近づいて展示を見る層に分かれることができました。

また展示内容について個人的にとても興味があったのが、海の王者・モササウルスです。古生物であることは変わりないのですが、恐竜ではなく爬虫類の仲間とのこと。和歌山で発見された化石が展示されていたのですが、そのモササウルスの歯が、私は気になって仕方がなかった。というのも、先日某SF大会でサメの歯の向きについてレクチャーを受けた記憶が鮮明だったからです。
曰く、サメの歯は平らな面と丸みのある面があり、平らな面が外側で、丸みのある面が内側なのだそうです。しかし多くのサメ映画(CG)において丸みのある面が外側、平らな面が内側になっていることにツッコミを入れていました。
そんな知識を得て気になった、モササウルスの歯の向き。しかし化石を見ると、モササウルスの歯はそもそもサメの歯と形状が異なっていたのです!円錐に似た形状で、ちょっとクジラの歯に似ていました。サメの仲間ではないもんな…クジラの仲間でもなさそうだけどな…

そして展示の最後の方には恐竜が絶滅したとされるK-Pg境界にまつわる展示があったのですが、CGを使った説明がわかりやすくて面白かったです。そういえば隕石落下が大量絶滅の契機だったというのはもうほぼ確定なんですね。私が子供の頃には「隕石落下が原因だったという説がある」くらいだったと思うのですが…時代は変わるなぁ。

科博は常設展コーナーもデジタル技術を駆使していて、国立博物館の名に恥じない立派な施設だと常々思っていますが、特別展も非常に良かったです。とても楽しめました。

おまけ。グッズコーナーに置かれていた鳥獣戯画の恐竜バージョンが非常にツボで、手ぬぐいが欲しかったのですが、見つからず諦めて帰りました。いいなぁ、あれ…