好物日記

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林譲治『星系出雲の兵站3』を読みました

星系出雲の兵站3 (ハヤカワ文庫JA)

星系出雲の兵站3 (ハヤカワ文庫JA)

すでにシリーズは第二部に突入しているというのに、追いかけるのが遅くて申し訳ない。正体不明の敵・ガイナスと戦う人間たちの話です。未知の敵と戦うときにどのように情報を集めるのか、そのためにはどのような物資が必要なのか、その物資はどのように製造するのか、製造するための資金はどのように調達するのか、などなど、戦いの地味な部分にクローズアップしたSFシリーズで、すごく面白い。

シリーズ第三弾では前作で戦場となった準惑星・天涯に潜入して威力偵察を行う小隊が見たものとは…!というドキドキわくわくなストーリーと、同じく前作で敗北を喫した大企業の頭領の跡目争いという水面下の駆け引きを手に汗握って見守るストーリーが2つの柱です。強弱組み合わせた上手い構成だなぁ。
いずれも「勢いや精神論では勝てない」というのが物理法則のように据えられているのが好印象です。

前から薄々気づいていたのですが、このシリーズはあれですね、一種のビジネス書としてお勧めできますね。軍隊と未知のエイリアンという特殊な舞台設定ではあるものの、よき上司とは、いい仕事とは、というビジネスパーソン永遠の問いをカウンターパンチで繰り出してくる。
特に今回初登場の吉住さんはまさに理想の上司です。

目立たないこと、それこそが有能さの証明だ。部隊からの要求は計画通りには進まない。単純な補給業務でさえ、予想外の事態は起こる。そうした時に適切に対応し、目に見える形のトラブルを意識させないというのは、高い実務能力と想像力が要求される。
だからこそ吉住大佐の仕事は目立たない。とかく組織では大きなトラブルが起きてから、それを解決できる人間が有能と評価されがちだ。しかし、真に有能な人間は、全体に目配りし、トラブルの兆候を発見し、それが問題となる前に対処する。(P.77-78)

ついつい目立つところに目がいくのは人情ではありますが、目立たないことが有能であるというのはまったくその通り。そう、優秀なひとはさらりと仕事を終わらせて定時で帰るんですよね。憧れる…

そしてやっぱり冒険パートは心躍ります。まだはっきりと正体が明かされていないガイナス兵。コミュニケーションが成立する日は来るのか。そして最後に爆弾落としていったのでますます盛り上がってまいりました!
続きが気になるシリーズです。