好物日記

本を読んだり美術館に行ったりする人の日記

郷さくら美術館「青・蒼・碧」展に行ってきました

satosakura.localinfo.jp

最近日本画を観に行っていないな、と思ったら観たくてたまらなくなり、仕事も休みだったので行ってきました。郷さくら美術館は中目黒にあるこじんまりした現代日本画専門の美術館で、お気に入りスポットのひとつです。とにかくアクセスが良いのですが、謎なのはどなたのコレクションなのかということで、企業でも実業家でもなさそうだし、公立でもないし…かといって画廊でもないんですよね。宗教家かなぁ。基本的に写真撮影OKというのも特徴的。

それはともかく、今の展示はBlueです。日本語でいう青と蒼と碧を、日本画ではどんなふうに表現し、その色はどんなふうに作るのかというのが展示されていました。空や海の絵が多く、涼しげでよい。

一番好きだったのは、清水由朗の「序曲」です。展示の分類としては空の青ですね。メモも忘れてぼーっと観ていたのでどこの国で描いたものか忘れてしまったのですが、フランスだったかな、朝を迎えた大聖堂の絵です。日の光がさんさんと注いでいて、空の青がグラデーションになっていて、それが4枚の屏風に描かれているんですよ!色の塗り方もそこまでバリバリの日本画って感じではなくって、アニメタッチな雰囲気すらあるのに、これを屏風に描きますか、面白いなぁ!こういうギャップはわくわくします。平山郁夫の弟子筋だそうで、なるほどなー。

もうひとつ面白かったのが、田島周吾の「魚棚駅前商店街」という横に長い絵で、水上に伸びる魚棚駅のプラットホームから商店街が子細に描かれています。イラストレーションタッチというか、魚をテーマにした店が立ち並ぶ商店街や、店頭に並んだ魚の頭の形をした傘立てとかおまるとか、そういうこまごました部分が凝っていて楽しい。猫の爪研ぎ屋さんとかあったり。
他の作品が気になってググってみたら、サイトをお持ちでした。いろんな作品や、魚棚駅にいた魚たちも観られるので、よかったら下記リンクよりご覧ください。個性豊かな魚たち、細かな設定や名前が楽しいです。

日本画家 田島周吾 ~たじま絵画教室〜 - 魚箋堂 ・ 田島 周吾

他にも那波多目功一はさすが貫録だなぁとか、二川和之の月が清廉で良いなぁとか、同時開催の「桜百景」展のほうで展示されていた宮下真理子の「蒼穹の花―不動桜の景―」は色の使い方が絶妙だなぁとか思いながらのんびり観賞していました。日本画は癒される。


絵を描く人間ではないので詳しくは知らないのですが、そもそも青って昔から高貴な色であったはずです。合成顔料が開発されるまではラピスラズリを使ったりしていて、元手もかかるしおいそれと使える色ではなかったのではないか。たぶん洋画なら天空と聖母マリアに使うくらいでは?日本には染物や古伊万里の青の原料として藍があるけど、藍は青ほど青くないわけですし、やっぱり輝くようなブルーとは違う。私が偏愛する加賀の群青壁は圧巻ですが、あれだって財力の誇示だったわけですし。
日本画は金箔で豪勢にするイメージが強いですが、それよりも青でこんな風に空や海を一面に塗れるって、もしかしてすごいことなのでは。郷さくら美術館は現代日本画の美術館だから普通に使ってますけど、それは技術の進化のたまものなのであって、昔ならそんな贅沢な!ってことになっていたのかな?日本画は江戸時代の琳派の流れや浮世絵の流れも良いのですが、洋画の手法が入ってきてびっくりした後の快進撃が私はすごく好きなのです。横山大観とか竹内栖鳳とか。しかしこれまで、色の変遷という視点で観たことはなかったなぁ。これからちょっと気にすることになりそうです。
とはいうものの画家という生き物が、顔料の値段が高いからってその色を避けるようなこと、するとは思えませんね…

中目黒で夏を感じて涼を取れる展示は2019/9/1まで。