好物日記

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映画『ラ・ラ・ランド』を観ました

gaga.ne.jp

ほんと今更なんですが、TSUTAYAでDVDを借りて観ました。しかしめっちゃ良かったです…!!!
過去の名作映画への敬愛が感じられ、しかし懐古趣味に走らず現代の作品として仕上がっている。納得の話題作だ。
主演のライアン・ゴズリング(セブ役)は「ブレードランナー2049」で観てからチャーミングな俳優さんだなと思っていましたが、本作でも素敵だった。同じく主演のエマ・ストーン(ミア役)は私にとって今作が初めましてだと思いますが、渋い顔さえも魅力的という無敵さ…。
そしてデミアン・チャゼル監督のジャズ愛がひしひしと伝わってきました。「セッション」がいまいち性に合わなかったのでどうかなーと思って観るのを延ばし延ばしにしてたんですが、「ラ・ラ・ランド」を劇場で観なかったことを後悔すらしている。「セッション」に出ていた鬼教官役のJ・K・シモンズが今回はレストランのオーナーとなってセブにクビを言い渡していて笑ってしまった。

セブとミアの初対面の印象は最悪、「あなたにはときめかないの」なんて言ってるくせにいい感じになっていくところはまるで少女漫画でしたが、悪くないです。夢に向かって頑張っても立ちはだかる壁、度重なる敗退に次の失敗が怖くなって自分で可能性を断ち切ってしまう葛藤とか、成功ものストーリーとしては結構王道なのですが、恋愛ものとしては時代の変化が感じられてうれしいです。チャゼル監督はクラシックなミュージカルが好きということですが、お互いがそれぞれ信じる道を行くというのが21世紀のミュージカルだなぁという印象で、非常に素敵でした。自分の道を進め!迷うな!という力強いメッセージを感じる。「セッション」の時も思いましたが、この監督さん結構骨太というか、ストイックですよね。そこが良いんです。

ここからはネタバレ入るのでワンクッション入れます。



ラ・ラ・ランド」公開時に賛否両論分かれるという話を聞いてちょっと気になっていたのですが、DVD観る前に「めっちゃ良かった!」と言っていた人曰く「ハッピーエンドでない」ことで結末に納得できない人がいたのかもしれない、とのことでした。しかし私はこれ以上ないくらいまっとうなエンドだと思うし、ある意味ハッピーエンドに数えても良い気がする。
カップルのそれぞれに叶えたい夢や未来があるとき、それが必ずしも同じ道で同じスピードで実現できるわけではないでしょう。しかし片方が片方の未来のために自身の夢に妥協するのはフェアじゃないし、そんな時代ではない、と信じたい。本当はどっちも手に入るのが理想ではあるけど、現実はそこまでうまくいかないことのほうが多い。それでも夢を見させてくれよ!という人には、渋いラストはお気に召さないかもしれない。
しかしだからこそ、このラストが映えるのだと私は思います。彼らは互いの夢が真剣であることを理解していたからこそ、一度別れる必要があった。そのうえでラストで、二人が選ばなかったIFの世界をことさら華やかに描くの、やるなぁと思います。二人が選べば実現したかもしれない未来、あの時手を離さなければそういう結末になったかもしれない未来、しかし彼らが選ばなかった未来です。
あのときミアは自分の夢を実現するために没頭せざるを得なかった。でもその前にセブに出会ってしまった。しかしセブに出会わなければ一人芝居の舞台などしなかっただろうし、そうしたらきっと成功への切符は手に入らなったでしょう。この世の9割はタイミングです。良いも悪いもない。
「あなたはあの音楽が好きなの?」と痛いところ突いて聞くのも、「あきらめちゃいけない」と実家まで押しかけて説得するのも、いい関係だなぁと思う。結局別れてしまうにしても、そういう相手がいたということは素晴らしいですよね。


セブがピアノで弾くメロディが「ロシュフォールの恋人たち」のテーマに似ていたのが嬉しかったです。華やかな衣装も。ラストにIFの世界で踊る場面はまるで「パリのアメリカ人」だった。一人芝居の主人公「ジュヌヴィエーヌ」はシェルブールの雨傘から?いろいろと過去の名作から引っ張ってきていそうだけど、私に判別できたのはこれくらいです。いいオマージュだ。

すごく良かったです。